豊田倫理法人会　設立２周年記念講演会　完結編

前回の続き・・・

千日回峰行の最中、

土砂降りの中で体力的にはもう

ボロボロの状態。

「ものすごい雨と嵐のなかで

おむすびをうずくまって食べ

ようとするとその一粒一粒が流れてしまい、すするように食べている時に思わず

嘆きの涙ではなく感謝の涙が出てきたそうです。

ここにお米一粒を食べ、風呂に入れる、屋根のあるところで布団で寝られる・・・なんて

幸せなんだろう。自分の心を磨くという尊い仕事をさせてもらってなんて幸せなんだ」と

苦しみの心から喜び・感謝の心に切り替わる体験をしたそうです。

　
　千日回峰行の最終日を迎える前に「行が終われば”大阿闍梨”の称号はもらえるが、

そんなものはいらないや。１９歳の時に夢と希望に燃えて吉野に来てお堂で泣いてい

た自分でいたいと」。そんな思いから”人生生涯小僧の心”と色紙に書き記しました。

　
　満行したのは平成１１年の９月２日。達成した１年後、千日回峰とセットになっている

”四無行”に挑まれます。四無行では、離れている人の匂いとか、線香の灰が落ちる

瞬間がスローモーションのように見えたり、灰が落ちる音がボンと聞こえてくるくらい

五感が研ぎ澄まされるそうです。４日目からは死臭を漂わせながら見事満行しました。

　
　その後、吉野の山を下りられ郷里の仙台市で慈眼寺を建立したのち”百日間の塩と

五穀（米、大麦、小麦、小豆、大豆プラス胡麻）を断って最後の百日目に２４時間飲ま

ず食わず、横にならずに８千枚の護摩を焚き続けるという修行も敢行されるのでした。

　ただ、そのような苦行を満行しても吉野での人間関係がしっくりいかなかったことが

心残りだったそうです。ある時、吉野に行く機会があって仙台から車を走らせました。

駐車場に着いた時、その当時しっくりいかなかったお寺の方が丁度いたので「よし、

声をかけてみよう」と声をかけました。「お元気ですか。お変わりありませんか。」

「あぁ元気だよ」。いつもならここで話が途切れてしまうのですが、もう一歩踏み込み

話かけました。「私、仙台から車で来たのですよ」、その時相手の声のトーンとか口

調が変わったのがわかりました。「へぇー、そうなんですね。大変だったでしょう」。

その瞬間です。それまでわだかまりを持ち続けていた心が何かストーンと落ち、

これか！と思ったそうです。

人間関係がうまくいかないのは、”心の器の大きさが同じ者同士だから相手が嫌なら

私も嫌、許せないものは許せない”と思うものなんだ。

だったら、私が自分の心の器を大きくすればいいのだと。

これまで難行苦行を数々行ってきたけれど、心の器を広げるという目的は人と人の間

でしか果たせない事なんだ”と気づいたと言われました。しかし、それは山の行で心の

畑を耕してきたからこそ、里で実を結ぶことができた。

修行とはありがたいことだと感謝するのでした。


　最後に”行とは何か、悟りとは何か”と考えた時に「私たちの人生はすべて行であると

思います。人間は雨を降らすことができなければ、風を吹かせることもできない。与えら

れた環境の中で辛いこと、苦しいこと、寂しいこと、いろいろありますがそれに共感しな

がら生きていくことが大切なのです。

自分の生まれたところがどんな場所や環境であっても山や野に咲く花のように

精いっぱい花を咲かせることが人生なのです。１日何事もなかったら感謝して

生きることが大切な事なんだと思うことです。このように思い、日々実践していくことが

”悟る”ということであります。」と締めくくられました。


”生き仏”と称される大阿闍梨とは一体どんな人なんだろう。

興味と好奇心で臨んだ記念講演でありました。講演の直前、一緒に記念撮影をさせて

いただきました。何か柔らかな空気と同時に緊張や気負いや気迫を感じず、静かに

でも強く佇んでいらっしゃる姿がとても印象的でした。

”本当の意味で洗練された方”とお会いでき改めて講演会に出席できて良かったと

思っています。













今回の話を聞いていて、千日回峰行も四無行も自分の意志だけで満行が

出来るわけではなく、満行するという想像を絶する強い意志と満行を助ける

人の協力があったところに何か大きな見えない力の働きがあって初めて

できるものだったんだなと講演や本を読んで実感いたしました。

やはり、塩沼亮潤 大阿闍梨は見えない力に選ばれた人なんだと確信しています。

選ばれた人だからこそ、今回の講演のようにもっともっと多くの人に多くのお話を

聞かせてあげてほしいと強く希望します。　　ありがとうございました。

　
　投稿者：広報担当 補佐　　　　大宮会計事務所　大宮